玉ねぎ栽培に挑戦したものの、なぜか大きくならない、植えた苗の枯れる原因が分からない、といった経験はありませんか?
特に初心者の方にとって、玉ねぎ栽培で失敗する原因となる病気や根腐れ、予期せぬトウ立ち、そして適切な肥料の管理は大きな悩みの種です。大切に育ててきた玉ねぎが期待通りに育たないと、がっかりしてしまいますよね。しかし、失敗には必ず原因があり、それを理解すれば対策を立てることが可能です。
この記事では、農家の方が直面しがちな玉ねぎ栽培の失敗原因を徹底的に分析し、具体的な解決策を分かりやすく解説します。


- 玉ねぎが大きくならない、枯れるといった失敗の具体的な原因
- 病気や根腐れ、トウ立ちを防ぐための実践的な栽培管理法
- 収穫量を左右する適切な肥料の選び方と与えるタイミング
- 失敗しにくい土作りと栽培環境の整え方
玉ねぎ栽培でよくある失敗原因
- 玉ねぎが大きくならない主な理由
- 植え付けた苗が枯れるのはなぜか
- 根腐れの原因となる過剰な水分
- 葉が枯れる病気のサインを見逃すな
玉ねぎが大きくならない主な理由

玉ねぎが期待通りに大きくならない場合、その原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。主な原因として、土壌環境と栄養管理の失敗が挙げられます。
まず、土壌の酸度(pH)が適切でないケースです。玉ねぎは弱酸性から中性(pH6.0~6.5)の土壌を好みます。これより酸性に傾いていると、いくら肥料を与えても根が栄養を十分に吸収できず、生育不良に陥ります。植え付け前の土壌改良を怠ったことが、失敗の根本的な原因になるのです。
次に、肥料の不足、特にリン酸の欠乏が考えられます。リン酸は玉ねぎの根の成長を促し、球の肥大に不可欠な栄養素です。元肥としてしっかり施されていないと、冬の間に十分な根を張ることができず、春になっても勢いよく成長できません。
また、密植による成長阻害も大きな原因です。株間が狭すぎると、根が十分に広がるスペースがなく、日光や養分を巡って隣の株と競合してしまいます。結果として、どの株も十分に大きく育つことができません。
大きくならない原因まとめ
玉ねぎが大きくならないのは、土壌の酸度、肥料不足(特にリン酸)、密植、日照不足、水分管理の失敗など、基本的な栽培管理に問題がある場合がほとんどです。どれか一つではなく、複数の原因が重なっていないか、栽培環境全体を見直してみましょう。
植え付けた苗が枯れるのはなぜか

定植した玉ねぎの苗が枯れてしまうのは、栽培者にとって非常につらい状況です。苗が枯れる原因は、主に植え付け直後の環境ストレスにあります。
最も多いのが水分の過不足です。植え付け後に雨が降らず、乾燥した日が続くと水分不足で枯れてしまいます。逆に、心配して水をやりすぎたり、長雨が続いたりすると、土壌が過湿状態になり、根が呼吸できずに立ち枯れを起こします。
肥料あたりも無視できません。植え付け直前に化学肥料を施したり、苗の根に直接肥料が触れたりすると、根がダメージを受けて枯れてしまいます。畑の準備は植え付けの2週間前には済ませ、肥料を土によくなじませておくことが重要です。
また、植え付ける苗そのものに問題がある場合もあります。鉛筆よりも細いような小さな苗は、冬の寒さや霜に耐えられず、枯れてしまう可能性が高くなります。かといって、太すぎる苗は後述する「トウ立ち」の原因になるため、直径7mm程度の適切なサイズの苗を選ぶことが成功の鍵です。
ネキリムシの被害にも注意
畑の一部だけがポツポツと枯れている場合、ネキリムシの被害が疑われます。夜間に活動し、地際部の茎を食害するため、苗が切り倒されたように枯れてしまいます。株元を少し掘ってみて、幼虫がいないか確認しましょう。
根腐れの原因となる過剰な水分

玉ねぎ栽培において、根腐れは収穫量を大きく左右する深刻な問題です。根腐れは、その名の通り根が腐ってしまう状態で、主な原因は土壌の過湿と排水性の悪さにあります。
玉ねぎの根は酸素を必要としますが、土壌中の水分が多すぎると土の隙間が水で満たされ、根が酸欠状態に陥ります。この状態が続くと根の機能が低下し、やがて腐敗してしまうのです。一度根腐れを起こすと、養分や水分を吸収できなくなり、地上部の葉が黄色く変色し、最終的には株全体が枯死に至ります。
特に、粘土質の土壌や、水はけの悪い畑で栽培している場合に発生しやすくなります。このような畑では、降雨後に水がたまりやすく、常に土壌がジメジメとした状態になりがちです。
対策としては、まず高畝にすることが非常に有効です。畝を高くすることで、根が直接水に浸かる時間を減らし、排水性を確保できます。また、堆肥やバーク堆肥などの有機物を十分にすき込み、土をふかふかにする土壌改良も欠かせません。これにより、土の団粒構造が発達し、水はけと水持ちのバランスが良い理想的な土壌環境を作ることができます。
葉が枯れる病気のサインを見逃すな

玉ねぎの葉が枯れるのを見て、すぐに「病気だ」と判断するのは早計かもしれません。玉ねぎは新しい葉が中心から生えてくる際に、外側の古い葉が自然に枯れていく生理現象があります。これは健全な成長の証なので、心配する必要はありません。
しかし、注意すべきは病気が原因で葉が枯れるケースです。生理現象との大きな違いは、枯れ方や症状の広がり方です。
見分けるポイント
生理現象の場合:
主に外側の葉から枯れ始め、株全体は元気に成長しているように見えます。
病気の場合:
葉に斑点やカビが現れたり、特定の箇所から急激に枯れが広がったりします。例えば、「べと病」の場合、初期症状として葉に淡い黄色の不明瞭な病斑が現れ、湿度が高いと灰紫色や白色のカビが生えます。症状が進行すると、その部分から葉がくびれて枯れてしまいます。
病気のサインを見逃さないためには、日頃からの観察が何よりも重要です。葉の色や形、枯れ方に異常がないか、定期的にチェックする習慣をつけましょう。早期発見・早期対応が、被害を最小限に食い止める鍵となります。
その他の玉ねぎ栽培の失敗原因
- 栽培前に知っておきたい玉ねぎの病気
- 玉ねぎのトウ立ちを防ぐポイント
- 肥料の過不足が引き起こす生育不良
- 初心者が陥りやすい栽培の罠
栽培前に知っておきたい玉ねぎの病気

玉ねぎ栽培を成功させるためには、発生しやすい病気とその対策を事前に知っておくことが不可欠です。特に多湿な環境で発生しやすい病気が多く、予防的な管理が重要になります。
病気の種類 | 特徴と主な症状 | 主な対策 |
---|---|---|
べと病 | カビが原因。葉に淡い黄色の病斑ができ、湿度が高いと灰紫色や白色のカビが生える。進行すると葉が枯死する。 | 排水の良い土壌で栽培する。風通しを良くする。発病株は早期に除去。予防的な薬剤散布が有効。 |
灰色かび病 | 冬から春の多湿期に発生。葉に水浸状の病斑ができ、灰色のかびが生える。 | 風通しを良くする。適切な株間を保つ。発病初期に薬剤を散布する。 |
軟腐病 | 細菌が原因。鱗茎(玉の部分)がドロドロに腐敗し、強い悪臭を放つのが特徴。 | 高畝で排水対策を徹底する。窒素肥料の過剰施用を避ける。傷をつけないように収穫・管理する。 |
萎黄病 | アブラムシなどが媒介するウイルスが原因。葉が淡い黄色になり、生育が悪化する。 | ウイルスを媒介するアブラムシを防除する。健全な苗を使用する。 |
これらの病気は、一度発生すると急速に広がる可能性があります。健全な苗を使い、排水と風通しを良くし、畑を清潔に保つといった基本的な栽培管理を徹底することが、最も効果的な予防策となります。
玉ねぎのトウ立ちを防ぐポイント

収穫間近の玉ねぎから花茎が伸びてしまう「トウ立ち(抽苔)」は、玉の肥大が止まり、内部に硬い芯ができて食味を著しく損なうため、避けたい現象です。
トウ立ちのメカニズムは、「ある程度大きく成長した苗が、冬の一定期間の低温に遭遇する」ことで、子孫を残そうと花芽が形成されることにあります。この条件を満たしてしまう主な原因は以下の通りです。
- 植え付け時期が早すぎる: 暖かい時期に植え付けると、冬を迎える前に苗が大きく育ちすぎてしまいます。
- 大苗を植え付ける: 鉛筆よりも太いような大きな苗は、低温に感応しやすく、トウ立ちのリスクが非常に高くなります。
- 肥料の与えすぎ(特に窒素): 秋に窒素成分の多い肥料を与えすぎると、葉の成長が過剰に促進され、苗が大きくなりすぎます。
- 暖冬: 近年の暖冬傾向も、秋の生育を促進し、トウ立ちの一因となることがあります。
トウ立ちを防ぐための最重要ポイント
トウ立ちを防ぐためには、「冬が来るまでに株を大きくしすぎない」ことが鉄則です。具体的には、①地域の適期を守って植え付けること、②直径8mm前後の適切なサイズの苗を選ぶこと、そして③秋の元肥や追肥で窒素を効かせすぎないこと、この3点を徹底することが最も重要です。もしトウ立ちしてしまった場合は、花茎を早めに切り取れば、玉の品質低下をある程度抑えることができます。
肥料の過不足が引き起こす生育不良

玉ねぎは栽培期間が長い作物であり、生育ステージに合わせた適切な肥料管理が収穫量を大きく左右します。肥料が多すぎても少なすぎても、生育不良や品質低下につながります。
肥料不足のリスク
特に重要なのが、越冬前の元肥です。この時期に根の成長を促すリン酸が不足すると、冬の間に十分な根を張ることができません。その結果、春になっても肥料を効率よく吸収できず、球が大きく肥大しません。
肥料過剰のリスク
逆に、肥料が多すぎる場合、特に窒素成分の過剰は様々な問題を引き起こします。秋に窒素が効きすぎると、前述の通りトウ立ちのリスクが高まります。また、収穫期近くまで窒素分が残っていると、球が締まらず水分が多くなり、貯蔵性が著しく低下します。さらに、病気にもかかりやすくなるため注意が必要です。
ポイントは、「止め肥」のタイミングです。玉ねぎが肥大し始める春先(一般的に3月上旬頃)以降に追肥を行うと、窒素過多になりがちです。2回目の追肥は2月中旬~下旬までには終え、それ以降は肥料を与えないようにしましょう。生育期間全体を通じて、肥料の効果がゆっくりと続く緩効性肥料を元肥に使うことも、失敗を減らすコツです。
初心者が陥りやすい栽培の罠

玉ねぎ栽培の基本的なポイントを押さえたつもりでも、経験の浅い初心者が陥りやすい意外な罠がいくつか存在します。
1. 品種選択の誤り
玉ねぎには、収穫時期によって「早生(わせ)」「中生(なかて)」「晩生(おくて)」といった品種があります。お住まいの地域の気候や栽培時期に適した品種を選ばないと、生育不良や収穫時期のズレが生じます。例えば、寒冷地で晩生種を育てようとしても、十分に肥大する前に暑い時期を迎えてしまい、失敗することがあります。まずは、その地域で栽培実績のある品種を選ぶのが安全です。
2. 深植え
苗を植え付ける際に、良かれと思って深く植えてしまうことがあります。しかし、玉ねぎを深植えすると、球がうまく肥大できず、縦に長い形の玉ねぎになってしまいます。植え付けの際は、根元の白い部分が少し見えるくらいの浅植えが基本です。
3. 収穫・乾燥のタイミングミス
収穫の目安は、全体の8割程度の葉が自然に倒れた頃です。倒伏してもすぐに収穫せず畑に長く置きすぎると、病気にかかりやすくなったり、貯蔵性が低下したりします。収穫後は、雨の当たらない風通しの良い場所でしっかりと乾燥させることが重要です。この乾燥が不十分だと、貯蔵中に腐敗する原因となります。
失敗しないための栽培管理の知識
- 玉ねぎに苦土石灰をまく時期はいつ?
- 玉ねぎの隣に植えてはいけない野菜は?
- 収穫を左右する枯れる原因の特定
- 玉ねぎ栽培の失敗原因を理解し防ごう
玉ねぎに苦土石灰をまく時期はいつ?

玉ねぎ栽培において、土壌の酸度調整は成功の第一歩です。前述の通り、玉ねぎは酸性土壌を嫌い、生育に最適なpHは6.0~6.5の弱酸性から中性です。日本の土壌は雨が多いため酸性に傾きがちなので、多くの場合、苦土石灰などを使って酸度を調整する必要があります。
苦土石灰をまく最適な時期は、苗を植え付ける2週間以上前です。これは、石灰が土と反応して効果を発揮するまでに時間がかかるためです。植え付け直前にまくと、土壌のpHが急激に変化して根にダメージを与えたり、元肥の肥料成分と反応して効果を打ち消し合ったりすることがあります。
苦土石灰の施用手順
- 植え付けの2週間以上前: 畑全体に苦土石灰を均一に散布します。量は土壌の酸度によって異なりますが、1平方メートルあたり100g~150g(3握り程度)が目安です。
- 散布後: すぐに畑を深く耕し、石灰と土をよく混ぜ合わせます。
- 1週間後: 堆肥や元肥を施し、再度よく耕します。
- さらに1週間後: 畝を立て、苗を植え付けます。
この手順を守ることで、肥料成分が安定し、玉ねぎの根にとって最適な土壌環境を準備することができます。
玉ねぎの隣に植えてはいけない野菜は?

いわゆる「コンパニオンプランツ」のように、一緒に植えることで良い影響を与え合う植物がある一方で、生育を阻害し合う「植えてはいけない組み合わせ」も存在すると言われています。
玉ねぎ(ネギ類)との組み合わせで、特に注意が必要とされるのはマメ科の野菜(エンドウ、ソラマメ、インゲンなど)です。その理由は、玉ねぎの根に共生する微生物が、マメ科の根に付く根粒菌の働きを阻害してしまう可能性があるためです。根粒菌は空気中の窒素を固定して土壌を豊かにする働きがあるため、その活動が妨げられるとマメ科の生育が悪くなることがあります。
連作障害にも注意
「隣に植える」こととは少し異なりますが、最も避けるべきは同じ場所でネギ類の野菜を連続して栽培すること(連作)です。玉ねぎや長ネギ、ニンニクなどを同じ場所で続けて作ると、土壌中の特定の病原菌や害虫が増え、生育が著しく悪くなる「連作障害」が発生しやすくなります。最低でも1~2年は、同じ場所にネギ類の野菜を植えないようにしましょう。
ただし、野菜の相性については、科学的に明確な根拠が示されていないものも多くあります。絶対的なルールではありませんが、リスクを避けるという意味で、これらの組み合わせは避けておくとより安心でしょう。
収穫を左右する枯れる原因の特定

玉ねぎの葉が枯れる原因は、生育ステージによって様々です。適切な対処をするためには、どの時期に、どのような枯れ方が起きているのかを正確に特定することが重要です。
生育初期(植え付け~越冬)
この時期に枯れる主な原因は、植え付け時のストレスです。乾燥、過湿、肥料あたり、小さすぎる苗などが考えられます。株全体が元気がなくなり、しおれるように枯れていくのが特徴です。対策としては、適切な苗を選び、水はけの良い土壌で適度な水分管理をすることが求められます。
生育中期(春先~肥大期)
春になって新しい葉が伸びてくる時期に外側の葉が枯れるのは、多くが生理現象です。しかし、葉に斑点ができたり、特定の病気の症状が見られたりする場合は、病害の可能性があります。この時期は病気が発生しやすいため、注意深い観察が必要です。
収穫期
収穫が近づくと、球に栄養を集中させるために葉が自然に枯れ始め、やがて倒伏します。これは収穫のサインであり、問題ありません。しかし、倒伏が始まる前に葉先から枯れ上がってくる場合は、肥料切れ(特に追肥の不足)の可能性が考えられます。
このように、同じ「枯れる」という現象でも、時期によって原因は全く異なります。いつ、どのように枯れているのかを冷静に観察し、原因を特定することが、次の栽培での成功につながるのです。
玉ねぎ栽培の失敗原因を理解し防ごう

この記事では、玉ねぎ栽培で起こりがちな失敗の原因とその対策について詳しく解説してきました。最後に、成功へのポイントをリスト形式でまとめます。これらの要点を押さえ、豊かな収穫を目指しましょう。
- 玉ねぎが大きくならない原因は土壌酸度や肥料不足、密植など複合的
- 苗が枯れるのは植え付け直後の乾燥や過湿、肥料あたりが主因
- 根腐れは排水性の悪い土壌で起こるため高畝や土壌改良が不可欠
- 葉の枯れは生理現象か病気かを見極めることが重要
- べと病や軟腐病などの病気は予防的管理が基本
- トウ立ちを防ぐには適切な苗のサイズと植え付け時期の遵守が鉄則
- 秋の窒素肥料の過剰はトウ立ちや貯蔵性低下を招く
- 肥料は元肥のリン酸と適切な時期の追肥が収穫量を左右する
- 止め肥は3月上旬までに行い、それ以降は与えない
- 初心者は品種選び、浅植え、収穫タイミングに注意が必要
- 苦土石灰は植え付けの2週間以上前に施用する
- 連作を避け、1~2年は同じ場所にネギ類を植えない
- マメ科野菜との混植は避けた方が無難
- 生育ステージごとに枯れる原因は異なるため観察が大切
- 失敗の原因を一つずつ理解し、次の栽培に活かすことが成功への近道